このページを Google Bookmarks に追加

枕草子25段:すさまじきもの 品詞分解



枕草子25段:すさまじきもの 現代語訳・品詞分解《前半》



    興ざめするものは昼間吠える犬。春の網代(あじろ)。三・四月頃の紅梅の着物。
    牛が死んだ牛飼い。赤ん坊の死んだ産室。火をおこさぬ炭櫃(すびつ)。または地下炉(じかろ)。
    大学の博士が、次々と引き続いて女の子ばかり産ませた場合。方たがえに行った時にもてなしをしないところ。
    まして、節分の(方たがえ)などは大層に興ざめである。


    ・冒頭から興ざめするものを羅列している。いずれも的外れであったり、使えない場合である。

    ・「博士」は、当時男性しかなれなかったので、この様な感想になっている。

    ・「方違へ」は【かたたがえ】と呼ばれ、陰陽道の考え方であり、ある方角・目的地が【凶】である場合に、直接むかわずに迂回して目的地に行く事。



    地方からよこした手紙で、贈り物のない場合。京からの手紙で贈り物のない場合を興ざめに思っているだろうが、それは知りたい思っていることなどを書き集めてあり、世間(都)の出来事などをも知るので、たいへん素晴らしいのである。

    ・人の国→地方

    ・文のものなき→手紙ものがない ここの「の」は同格の「の」と言われ、【~で】と訳す特別な場合。また、「なき」と連体形で終わっている事に注意。【~の場合】と言う意味を補う。

    ・「さこそ思ふらめ、」→「こそ」「らめ(已然形)」で【係り結び】になっている事と、【~だけれども】と訳すことに注意(「、」がある事も大事)。

    ・「聞けば」→「聞け」+「ば」で、【已然形】+【ば】となり、【~ので】【~だから】と訳す(順接の確定条件)。



    人のところへ、特に(特別に)きれいに書いてやった手紙の返事を、今は(もう)きっと持って(帰って)来ているだろうよ、不思議におそいことだと待っているうちに、

    ・やり→遣る ”遣唐使”の「遣」。派遣すると言う意味。

    ★1→タ行四段連用形の【促音便】 持つ(て)→持っ(て)

    ・「来ぬらむ」→”きぬらむ” 「ぬ」+「らむ」(あるいは「つ」+「らむ」)の様に「完了・強意」+「推量」と重なった場合には「きっと~だろう」と言う【強意】の意味となる。

    ・「あやしう」→「あやしく」が【ウ音便】になったもの。



    さきほどの手紙を、正式な立文にしろ、略式の結び文にしろ、大層きたなく扱ってぶくぶくにして、上に引いてあった墨なども消えてしまって、「(あちらに)いらっしゃいませんでした。」もしくは「物忌みだと言って受け取らない」と言って持って帰って来たのは、本当に情けなく興ざめである。

    ・「結びたる」→【連体形たる】であるから、何かが省略されていると考える。この場合は「むすびたる手紙」となる。

    「おはしまさざりけり」→「おはす」は”尊敬語”で「いらっしゃる」などと訳す。「ざり」は、【打消しの助動詞「ず」の補助活用】となるが、「ず」でなく「ざり」となっているのは、次に【「けり」と言う助動詞が来ているから】。

    「御物忌み」→”おんものいみ”。これも陰陽道に関連し、【不吉な事を避けるために家に引き籠る】事をいう。

    ★2→タ行四段連用形の【促音便】 持つ(て)→持っ(て)

    「帰りたる、」→【連体形「たる」】となっているので、下(次)に省略されている言葉があると考える。この場合は「事」とか「時」を補って訳す。