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徒然草53段:はめをはずした余興(前半)品詞分解



徒然草53段:はめをはずした余興(前半) 現代語訳・品詞分解




    これも仁和寺の法師(の話であるが)、稚児が法師になろうとするの分かれの会というので、
    それぞれ(酒など飲んで)遊んだ事があった時に、酔って浮かれて
    (その法師が)そばにある足鼎を取って頭にかぶったところ、(鼻や耳が)つかえるようなのを、
    鼻を押して平たくして、顔を差し込んで、舞い出でたので、その場にいる人々は皆、盛り上がった。



    ・これも仁和寺の法師、 → 「、」で区切られているが、作者(吉田兼好)が創作した話では無く、聞いた話(伝聞)であるから「~~の話であるが」と補うと分かり易い。

    ・法師にならん → 「法師:体言」「に:格助詞」「なら:ラ行四段:未然形」「ん:意思の助動詞:終止形」 → 「ん(む)」は「法師になろう」との意味であるから「意思」。

    ・あそぶ → 当時は「遊ぶ」というのは、酒食を伴う「宴会」の事を指す。

    ・ありける → 「あり:ラ変:連用形」「ける:過去の助動詞:連体形」 → 「過去の連体形」であるから「時」や「ところ」などの体言を補って訳す。

    ・酔ひ → 「ひ」 → 「えい」と読む → 「ひ」なので「ハ行」

    ・かたはらなる鼎 → 「かたはら:体言」「なる:断定の助動詞:連体形」「鼎:体言」 → 「断定の助動詞なる」の訳し方は基本は「~~だ」だが、この場合の様に「場所」が来ている場合には「~~にある」と所在を表すことになる。
    (「:かなえ」は、中国に由来する青銅器。三本足で立つ仕様で、主に祭祀に使われた。)

    ・かづきたれば → 「かづき:カ行四段:連用形」「たれ:完了の助動詞:已然形」「ば:接続助詞」 

    ⇒ 「かづく」は「被く」と「潜く」の二つがあり、それぞれ「四段」「下二段」と活用が2種類あり、「四段」は自動詞で「~~する」、「下二段」は他動詞で「~~させる」となる。ここの場合は法師が自らかぶった(被った)ので、自動詞で四段活用となる。

    ⇒ 「たれ」「ば」は【已然形+ば】となるので、「~~ので、だから」「~~ところ」「~~するといつも」のどれかだが、ここでは「~~したところ」という意味の方が良い。
    ( 接続助詞「ば」についてはこちら)


    ・つまるやうにするを → 「つまる:ラ行四段:連体形」「やうに:比況の助動詞:連用形」「する:サ変:連体形」「を:格助詞」

    ⇒ 「比況の助動詞」は重要度は低いが、出てきた時に悩むので覚えておくにこしたことは無い。ここは「まるでつまる様な」となるが、何が詰まるのか?ということで「耳」や「鼻」ということを補う。

    ・舞ひ出でたる → 「舞ひ出で:ダ行下二段:連用形」「たる:完了の助動詞:連体形」 → 「たる」は「連体形」ではあるが、ここは「完了」で訳す。また、「たる(たり)」は「連用形」に接続するので、そこから前の「舞ひ出で」の活用を考える。

徒然草53段:はめをはずした余興(前半) 現代語訳・品詞分解



    しばらく舞った後、(鼎を)抜こうとするが、どうしても抜く事が出来ない。
    酒宴も興醒めして、どうしようかと困ってしまった。
    (抜こうとして)あれこれすると、首の周りが傷ついて血が垂れて、ひどく腫れあがって、
    息も詰まってきたので、(鼎を)打ち壊そうとするが、簡単には壊れない。
    (鼎の)三本足の角の上に帷子をかけて、手を引き、杖をつかせて、
    京都にいる医者の元へ(向かい)、連れて行く途中
    人々が奇妙に見る事はつきなかった。



    ・かなでて → 「奏でて」と書く。

    ・抜かん → 「抜か:カ行四段:未然形」「ん(む):意思の助動詞:終止形」 → 「ん」の後ろが「と」なので終止形。

    ・大方抜かれず → 「大方:副詞」「抜か:カ行四段:未然形」「れ:狩野の助動詞:未然形」「ず:打消しの助動詞:終止形」

    ⇒ 「れ」の意味が難しい。助動詞「れ」は「受身」「可能」「尊敬」の意味があるが、ここの場合は「出来る出来ない」を問題にしているので「可能」。

    ⇒ 「大方」は副詞であるが、下に「否定」の言葉を伴うと「決して~~ない」という意味となる。この様な「副詞」の組み合わせを「陳述の副詞」と言う。


    ・いかがはせん → 「いかが:副詞」「は:副助詞」「せ:サ変:未然形」「ん(む):意思の助動詞:連体形

    ⇒ 「いかがはせん」で、どうしようか?の意味となる。

    ⇒ しかし、文法的には一つの山場である。「いか」の「」の部分は係助詞「か」と同じ機能を持ち、「係り結び」を導くことになる。そのため、「ん」は「終止形」ではなく「連体形」となる事に注意。


    ・とかくすれば → 「とかく:副詞」「すれ:サ変:已然形」「ば:接続助詞」 → 【已然形+ば】の問題になる。 

    ⇒ 上でも触れたが、【已然形+ば】の場合に、3つのうちどれを当てはめるかを考える必要がある。ここは「あれこれしたから」という訳語は問題ないものの、「原因・理由」なのか、「偶然・たまたま」なのかは悩ましいところだが、「原因・理由」と考えた方が素直だろう。


    ・はれにはれみちて → 「はれ」「はれ」と二つ同じ言葉を重ねるのはその状態を強調している(英語の more & more と同じ)。

    ・息もつまりければ → ここも【已然形+ば】の問題だが、「原因・理由」で悩むことはない。

    ・堪へがたかりければ → ここも【已然形+ば】で、「原因・理由」で悩むことはない。もっとも「堪へがたかり」が「形容詞ク活用のカリ活用」である点は注意が必要。「カリ活用」は下に「助動詞」が続く場合の活用である。

    ・かなはで → 「適はで」 → 「かなわないので」。「かなう」は目的を達成すると言う意味から、ここは「我慢できない」の意味に解す。

    ・三足なる角の上に → この法師は、鼎を逆さまに被っているので、外からは兜をかぶっているような角が三本生えた様子に見える。

    ・帷子 → 「かたびら」と読む。服の一種である。

    ・杖をつかせて → 「せ」が助動詞なのは良いとして、これが「尊敬」「使役」なのかは、「使役」で問題ないところ。

    ・京なる医師のがり → 「なる」は「京都」という場所に接続しているので「断定の助動詞」ではあるが「場所」を表して「~~にある(いる)」と訳す。「がり」は「許へ」という方向を表す。

    ・ゐて → 「ゐ」はワ行上一段の連用形であり、引率するの意味。「率て(いて)」と書く。同じくヤ行上一段に「率ゐる(ひきいて)」があるが注意する事。

    ・かぎりなし → 「かぎりはない」ので、もの凄くという意味を表す訳語を考える。