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伊勢物語9段:東下り②(あずまくだり) 品詞分解

伊勢物語9段:東下り②(あずまくだり) 現代語訳・品詞分解


    さらに進んで行って、駿河の国に着いた。
    宇津の山まで来て、自分が入ろうとする道は、大変暗く細い道で、つたやかえでが生い茂り、何となく心細く、嫌な目に会うことだと思っていると、
    修行者と出会った。
    「このような道をどうしていかれるのですか。」と言うのを見ると、見た人(顔見知り)であった。
    都にいる妻のもとにと思って、手紙を書いてことづけをした。
    (私は)駿河にある宇津の山のように、現実にも、夢にも、あなたとあえないのですよ。



    ・行き行きて→ 「行き行き」「て」→ 「行き行き:カ行四段動詞・連用形」「て:接続助詞」→ 「行き行き」は「行く」を二つ重ねたもので、「さらに~~」の意味を持つ。

    ・駿河の国→ 今の静岡県東部

    ・宇津の山→ 静岡県にある山(この伊勢物語の他に東海道五十三次でも取り上げられている名所)

    ・入らむ→ 「入ら」「む」→ 「入ら:ラ行四段・未然形」「む:意志の助動詞:終止形」

    ・暗う→ 「暗く:形容詞ク活用:連用形」が「ウ音便」になったもの。

    ・細き→ 「細き:形容詞ク活用:連体形」→ 「細き」と連体形で終わっているので体言を補って訳すと良い。ここでは先に出て来た「道」を補う。

    ・もの心細くすずろなる→ 「もの心細く」「すずろなる」→ 「もの心細く:形容詞ク活用:連用形」「すずろなる:形容動詞ナリ活用:連体形」→ 「もの心細く」は「もの」+「心細く」の組み合わさったもので「もの」は「ちょっと」の意味。「すずろなる」は「予想しない」という意味だが、ここはマイナスイメージの話の文脈であるから「良くないこと」という意味に訳す。

    ・いかでかいまする→ 「いかで」「か」「いまする」→ 「いかで:副詞」「か:係助詞(疑問)」「いまする:サ行下二段動詞:連体形」→ 「いかで」は「どうして」。「か」は「疑問の係助詞」で係り結びを導く。「いまする」は尊敬語で、話し手の修行者から在原業平に話しているので、修行者→業平への敬意を表している。また、先の係助詞「か」により「いまする」と連体形になる(係り結び) 。

    ・★1 見→ 見る(マ行上一段動詞・未然形)

    ・見し人→ 「見」「し」「人」→ 「見」「し:過去の助動詞の連体形」「人:体言」

    ・その人→ 京にいる在原業平の妻を指す(先の「かきつばた(唐衣)」の歌に出てくる「つま」のこと)。

    ・つく→ 「託す」と言う意味の「カ行下二段動詞・終止形」

    ・駿河なる宇津の山→ 駿河に「ある」宇津の山と訳す。「ある」は断定の助動詞で、「~~にある」という「存在」を表す。

    ・うつつ→ 「現実」の意味。「ゆめうつつ」という言葉があるが、「ゆめ」との対比。

    ・なりけり→ 「なり」「けり」→ 「なり:断定の助動詞:連用形」「けり:詠嘆の助動詞:終止形」→ 通常の「なりけり」は「~~であった」と訳すことが多いが、今回の様に【和歌】や【手紙】【心内文】などの場合に心情・感情を表すような場合には特に「詠嘆」の意味として「~~だなぁ」などと訳す。


伊勢物語9段:東下り②(あずまくだり) 現代語訳・品詞分解《後半》



    富士の山を見ると、五月の下旬なのに、雪が大層白く降っている。
    何時の季節かも分からない山は富士の山だ。
    何時のことだとして鹿の子模様のようにまだらに雪が降っているのだろうか。
    その山(富士山)は、都でたとえると、比叡山を二十ほど積み上げたような高さで、形は塩尻のようであった。



    ・見れば→ 「見れ」「ば」→ 「見れ:マ行上一段動詞・已然形」「ば:接続助詞」→ 【已然形+ば】の形なので「~~ので」「~~だから」と訳す(順接の確定条件)。

    ・五月のつごもり→ 「五月の末」と言う意味。「おおつごもり:大晦日」となる。

    ・雪いと白う降れり→ 「雪」「いと」「白う」「降れ」「り」→ 「雪:体言」「いと:副詞」「白う:形容詞ク活用:連用形(ウ音便)」「降れ:ラ行四段已然形」「り:存続の助動詞:連体形」→ 「り」が「已然形」に接続するのは【リカサミシイ】という事を含めてしっかりと押さえておく。「存続」なのは、意味的に「雪が降っていた(積もっていた)」なのか「雪が降っている(積もっている)」なのかの解釈なので、どちらも成り立ちうるのだが、「降っている」という表現の方が心情的に寂しさが継続しているという雰囲気を醸し出す分、そちらの方が良いのだろう。

    ・時知らぬ山→ 時を知らないということから、季節感を無視したと言う意味。

    ・鹿の子→ 鹿の子の模様という意味だが、鹿の子供は茶色に白い斑点があるので、そこからの連想で生まれた模様の事を指す。

    ・降るらむ→ 「降る」「らむ」→ 「降る:ラ行四段・終止形」「らむ:現在推量の助動詞:連体形」→ 「らむ」が「連体形」なのは、前にある「いつとて」の「か」が係助詞のために【係り結び】が成立するからである。

    ・ここにたとへば→ 「ここ」「に」「たとへ」「ば」→ 「ここ:代名詞」「に:格助詞」「たとへ:ハ行下二段動詞・未然形」「ば:接続助詞」→ 「ここ」は、を指すとされる(作者が都で思い起こして書いていると考えられるので)。【未然形+ば】は順接の仮定条件として「もし~~ならば」と訳すのでこれも注意したい。

    ・二十ばかり→ 「ばかり」は副助詞で程度を表し「~~ほど」と訳す。

    ・重ね上げたらむほど→ 「重ね上げ」「たら」「む」「ほど」→ 「重ね上げ:ガ行下二段・連用形」「たら:完了の助動詞:未然形」「む:婉曲の助動詞連体形」「ほど:体言」→ 「む」が婉曲なのは「~~ような」と訳したいという意味合いから。「む」も沢山の意味を有する助動詞であり、古文の学習を始めたばかりではこれを「婉曲」の意味に取るのはなかなか難しいが、「推量」と違うのは「考えている」という事を一歩進めて「他のモノ」と「比較」あるいは「例えている」という要素が入っている点が大きい。

    ・塩尻のやうになむありける→ 「塩尻」「の」「やうに」「なむ」「あり」「ける」→ 「塩尻:体言」「の:格助詞」「やうに:比況の助動詞:連用形」「なむ:係助詞」「あり:ラ変動詞・連用形」「ける:過去の助動詞:連体形」→ 「比況の助動詞」は珍しいので注意すること。「なむ」→「ける」で【係り結び】が成立している。