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先従隗始(まづかいよりはじめよ):「十八史略」の訓読文・書き下し文



先従隗始(まづかいよりはじめよ):「十八史略」の現代語訳・解説



    隗が言うには、

    「昔の王に、涓人に千金を持たせて買いに行かせた人がいました。

    (しかし涓人は)死んだ馬の骨を五百金で買って帰って来ました。

    王は怒りました。

    涓人が言うには、『死んだ馬さえも買ったのです。まして生きている馬だったら(なおさら)高く買うでしょう。

    千里馬はすぐにやってきます。』と。

    一年もしないうちに、千里の馬が三頭やってきました。

    もし、王がどうしても賢者を集めたいと思うのならば、まずこの私からお始めください。

    まして私よりも賢い者は、どうして千里の道を遠いと思うでしょうか(いや思わない)。

    そこで、照王は隗のために新しく宮殿(邸宅)を造り、師として仰いだ。

    そこで、賢者達は先を争って燕にやって来た。


    ・隗曰

    ⇒ 「隗」は郭隗:燕の学者・政治家(BC3世紀)。この話の通り、衰えた燕を立て直した。
    ⇒ 「曰」は「言う」の意味。「曰はく」と送る。


    ・有以千金使涓人求千里馬者

    ⇒「涓人」は「けんじん」と読む。宮殿で雑用をする人。
    ⇒「使」は後ろに人が来て、その人に~~をさせるの意味。











    ⇒「千里馬」は一日に千里(4000キロ)走るほど速い馬。
     (中国北部は「馬」の使用が戦いの勝敗を決めたので重要物資だった。)
     (後に前漢の時代に武帝が「汗血馬」を求めて遠征を行うほどだった。)


    ・五百金而

    ⇒「而」は置き字。直接読まず、上の「買」の送り仮名を「買ひて」とする。


    ・死馬且買之。況生者乎。

    ⇒ Aですら○○なのだから、Cであればなおさら○○である。
      (比較により、Cを高めるもので【抑揚】と言われる)



    ➡ 死馬ですら大金で買ったのだから、ましてや生きている馬ならばなおさらだ。


    ・馬今至矣

    ⇒ 「矣」は文末の置き字で【断定・決定】の意味があり「也」よりも強い意味を表す。

    ➡ 千里の馬はきっと来るだろう。


    ・ 期年

    ⇒ 一年


    ・今

    ⇒ もし~~ならば


    ・致士

    ⇒ 優秀な人材(賢者)を集める


    ・先従隗始

    ⇒ 「従」は~~からの意味を表す前置詞。

    ➡ この文章のタイトルでもある【まづかいよりはじめよ】(私の様な者から始めなさい)。


    ・況賢於隗者、豈遠千里哉。

    ⇒ 「況賢於隗者」
    ⇒ 「況(いはんや)」は「於(より)」と結びついて【比較】を表す。

    ⇒ 「豈遠千里哉」
    ⇒ 「豈(あに)」は「哉(や)」を伴って【反語】を表す。この際には「ンヤ」と送る。



    ・於是

    ⇒ 「ここにおいて」と読み、接続詞としての機能を持ち「そこで」と訳す。


    ・師事

    ⇒ 「師と仰ぐ」「先生とする」などの意味。
      (もちろん、通常の使い方で○○先生に師事し……などと使う)