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伊勢物語9段:東下り③(あずまくだり) 品詞分解

伊勢物語9段:東下り③(あずまくだり) 現代語訳・品詞分解


    なほも進んで行って、武蔵の国と下総の国との間に、大層おおきな川がある。
    その川を隅田川と言う。
    その川のほたりに一行が集まって座って、振り返って見ると、果てしなく遠くまで来たものだなぁと嘆きあっていると、
    渡し守が、「はやく船に乗りなさい。日も暮れてしまう。」と言うので、乗って渡ろうとするが、
    一行はなんとなく悲しく思われて、都に思う人がいないわけではない(からである)。



    ・行き行きて→ 「行き行き」「て」→ 「行き行き:カ行四段動詞・連用形」「て:接続助詞」→ 「行き行き」は「行く」が二つ重なったもの

    ・武蔵の国→ 今の東京都、埼玉県、神奈川県の一部を足した領域の国。(ちなみにスカイツリーは、この在原業平の話にちなんだ「業平橋駅(現在は【とうきょうスカイツリー駅】)」という場所に作られ、634m(ムサシ)の高さになっているのもその影響として有名)

    ・下つ総の国→ 「しもつうさのくに」→ 後に「下総国」と呼ばれるが、今の千葉県の北部側を指す。(ちなみに「上総国:かずさのくに」は千葉県の南部側を指す。)

    ・★1→ く→ 「カ変動詞来る・連用形」

    ・にける→ 「に」「ける」→ 「に:完了の助動詞:連用形」「ける:過去の助動詞:連体形」

    ・かな→ 詠嘆の意味を終助詞

    ・わび合へる→ 「わび合へ」「る」→ 「わび合う:ワ行四段動詞・已然形」「る:存続の助動詞:連体形」→ 「わび合う」は「嘆く」の意味。「る」は【リカサミシイ】で已然形に接続していると、「連体形」になっているので「存続」として「~~ている」と訳す。

    ・みな人→ 在原業平一行

    ・ものわびしく→ 形容動詞シク活用の連用形

    ・なきにしもあらず→ 「なき」「に」「しも」「あら」「ず」→ 「なき:形容詞ク活用:連体形」「に:断定の助動詞:連用形」「しも:副助詞」「あら:ラ変動詞・未然形」「ず:打消しの助動詞:終止形」→ 「に」が断定の助動詞である事に注意する(「完了」ではない)。


伊勢物語9段:東下り③(あずまくだり) 現代語訳・品詞分解《後半》



    丁度そのとき、白い鳥でくちばしと脚が赤い、鴫の大きさの様な鳥が水の上で遊びながら魚を食べている。
    都では見ない鳥なので、誰も鳥の名を知らなかった。
    渡し守に聞くと、「これこそが都鳥ですよ。」と言うのを聞いて、
    (都と言う)名前を持っているならば、いざ尋ねてみよう都鳥よ。私が恋しく思っている人は無事かどうか。
    と詠んだので、舟の中の人はみんな泣いてしまった。



    ・白き鳥の嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、

    →「白き」「鳥」「の」「嘴」「と」「脚」「と」「赤き、」「鴫」「の」「大きさ」「なる、」

    →「白き:形容詞ク活用:連体形」「鳥:体言」「:格助詞(同格)」「嘴(くちばし):体言」「と:格助詞」「脚:体言」「と:格助詞」「赤き:形容詞ク活用:連体形」「鴫(しぎ):体言」「の:格助詞」「大きさ:体言」「なる:断定の助動詞:連体形」

    ★この部分の「鳥の」の「の」は非常に重要。同格の格助詞と言い、「~~で」と訳すが、この部分より下に同じく」という単語を補って訳す必要が出てくる。「鴫の大きさなる、」の「なる」が「体言」なので、この下に先ほどの「」をつけて訳す。

    ★そして、この「白き鳥の嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、」(主語)に対応する部分は「魚を食ふ。」(述語)となる事に要注意。

    ・これなむ都鳥→ 「これ」「なむ」「都鳥」→ 「これ:体言(代名詞)」「なむ:係助詞」「都鳥:体言」→ 「なむ」は「係助詞」で【係り結び】を想起させるが、今回は係り結びの対象は無く、その下の「都鳥」を強調する意味で使われる。

    ・いざこと問はむ→ 「いざ」「こと問は」「む」→ 「いざ:感動詞」「こと問は:ハ行四段動詞:未然形」「む:意志の助動詞:終止形」→ 「こと問う」で「尋ねる」「質問する」の意味。(この話での在原業平が隅田川を渡った所が「言問橋(ことといばし)」と呼ばれる場所で、先ほどのスカイツリーの場所と近い)

    ・ありやなしや→ 「あり」「や」「なし」「や」→ 「あり:ラ変動詞・終止形」「や:係助詞(疑問)」「なし:形容詞ク活用:終止形」「や:係助詞(疑問)」→ 「あり」はラ変動詞なので注意。「や」は【疑問・反語】の係助詞であるが、ここも係り結びの対象は無い。

    ・こぞりて→ みんなの意味

    ・泣きにけり→ 「泣き」「に」「けり」→ 「泣き:カ行四段・連用形」「に:完了の助動詞:連用形」「けり:過去の助動詞:終止形」→ 「に」「けり」と良く出てくるパターンで「~~てしまった」。


    ★「ば」の識別

    ・鳥なれ → 「已然形」+「ば」
    ・問ひけれ → 「已然形」+「ば」
    ・名にし負は → 「未然形」+「ば」
    ・よめりけれ → 「已然形」+「ば」

    「已然形」+「ば」は、「~~ので」「~~だから」と訳す(順接の確定条件)

    「未然形」+「ば」は、「もし~~ならば」と訳す(順接の仮定条件)

    その事から、「名にし負はば」は、「もし(都という)名前を負っている(名前がついている)ならば」と訳すことになり、他の「ば」の付く場合と違うので、テストなどでは”定番中の定番”の問題となる。