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古文時代のクールビズ:直衣(のうし):狩衣(かりぎぬ)
軽装である
直衣
(のうし)、
狩衣
(かりぎぬ)。
最近は日本も春の期間が短くなって、5月に入ると直ぐに初夏の暑さになって、電車の中でもネクタイを外している人をチラホラ見かけます。
いざとなれば、クーラーをかけて温度調節が出来る今の我々はともかく、ろくな冷房機器も無かった古文の時代は、「服」を何とかして温度調整を図っていたようです。
菅原道真の提案(建議)により遣唐使が停止された事は日本に国風文化をもたらす事になりましたが、その代表格として「寝殿造」と「衣冠束帯」が浮かびます。
どちらも優雅な貴族文化の象徴の様に見られますが、しかし実際には、盆地という特質を持つ京都の地理ゆえ、 夏は暑く・冬は寒いと言う気候条件をこの「寝殿造」も「衣冠束帯」もダイレクトにこうむります。
つまり、夏の暑い時に「衣冠束帯」で生活なんか出来ない!!!!
と言う事になったのですね。
そこで、登場するのが
「直衣」:のうし
「狩衣」:かりぎぬ
どちらも、学校の定期テストではお馴染みの単語で、「書き」も「読み」も両方出来てほしい単語ですが
正式なガチガチの衣冠束帯とは違って、どちらも軽装な着物でした。(「直衣」は略服、「狩衣」は元々狩猟に行くときの動きやすい服だった訳です)
夏の暑い中、どうしても衣冠束帯を着なくてはいけない重要な行事や式典の際にはともかく、仕事ではなくて、自分の家や仲間内でくつろぐ際には手軽な服装で良いよね?と言う事に なったわけです。(もっと平たく言えば、要するに日常の服であると言う事)
まさに、古文版クールビズな訳ですが、この「直衣」「狩衣」を着ていると言う事は、古文の読解においても影響を持ってきます。
直衣・狩衣ともに時代が経過すると貴族の正式な服装になっていきますが、基本的には「お手軽な服」であって正式な服ではありません。
ですから、古文で貴族が登場するシーンなどで、「直衣」「狩衣」を着用しているなどと書かれている場合には、登場人物が結構くだけた・くつろいた状態で 何かやっていると言う事を背景にして読み進めていく事が出来ます。
これは、貴族だけではなく、天皇・上皇と言った方々も同じくなので、天皇や上皇が「直衣」「狩衣」を着て(召して)、登場人物も「直衣」を来ているなどの描写の場合には 、天皇・上皇と相当に仲が良い人達とのシーンと言う事になるわけです。
(ただし、天皇は「狩衣」を着ない事になっており、上皇になって初めて「狩衣」を着る事が出来たのは細かい事だけれども注意)
(また、貴族は「狩衣」で「院」に参る事は出来ても「宮中」には参内が出来ず、「直衣」を着る場合にも、特に天皇の許可を必要とした事から天皇と近しい距離である事の指標でもあった)