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大学入試の国語で良く聞く「論理的」って何ですか?
大学入試の問題を解いている時に、解説で必ず目にする(耳にする)「論理的」と言う言葉。
平たく言えば、「ある言いたい事」の「言葉を換えた」「積み重ね」
となりますか。
例えば、
(A):私は鰻が大好きである。
↓
(B):私は鰻の中でも国産の鰻が大好きである。
↓
(C):しかし、国産の鰻にもこだわりがあって、利根川産の鰻に目が無い
↓
(D):ところが、利根川産の鰻と言っても脂の乗った養殖の坂東太郎と言う鰻と
利根川で獲れる天然ものの鰻がある。
↓
(E):確かに、脂の乗った坂東太郎と甘いタレはご飯が進む
↓
(F):しかし、天然の鰻の引き締まった身の旨さも捨て難い。
↓
(G):かつて、お土産として岐阜の鰻を頂いた事があった。
これが、天然だったのか、養殖だったのか失念したのだが、
関西風の焼き方と言う事もあって、身が引き締まった感じが
天然鰻を彷彿させるものがあって、非常に心動かされた事がある。
↓
(H):聞けば、関東と関西の鰻の調理法は異なっていて
どうやら、鰻の余分な脂を落とす際に、関東風は蒸すのだそうだが、
関西風は蒸さずに何度も焼きを繰り返して脂を落とすそうだ。
↓
(I):個人的には、脂の美味しさも捨てがたいが、身の美味しさをしっかりと味わいたいのでそうなると関西風の方が理に適っていると言う事になるのだろう。
↓
この話を聞いた知人が、「そうだとすると、貴方は日本が世界に誇る( ① )の( ② )よりもオーストラリアのアンガス牛の方が好きですね?」と言う
などと言う文章があって、空欄を埋めなさいと言う問題があったとしましょう(そもそも矢印で切れ切れになっているので「文章」かどうかは疑問ですが(?))
この話が、基本的に「鰻」の話だと言う事は直ぐに分かります。
が、問題は最後の空欄(①)と(②)に何を入れるかと言う事で、なぜか「牛」が問題になっていると言う点。
これは、あくまで「論理」と言う事を分かりやすくと言う事での事例なので、ある意味極端ではありますが、
当然に、その前までに書かれている事をベースにして考えると言う事になります。
空欄(①)と(②)の前までに書かれている事は、「鰻」の「焼き方」や「産地」「鰻の脂肪」「鰻の身」などと分かります。
特に(I)の部分で「脂の美味しさ」よりも「身の美味しさ」と言う事が書かれています。
ですから、この(①)と(②)もその事が影響した語句が入ると考えられます。
また、(①)の前には「日本が世界に誇る」と書かれている事や、②の後ろに「~~より」と言う比較・対比の言葉が来て「オーストラリアのアンガス牛」と書かれている事から 、この部分には「日本の牛」についての語句が入る事が想像できます。
食べる事や、牛が好きな人は、この比較・対比の文章から空欄を補充することは可能ではありますが、 (そう言う問題はある種の”教養試験”と言えるでしょうが、2020年以降に増加する恐れはありますね) あくまで、問題文から考えると言う事で行くと、「アンガス牛」と言う言葉と対照的であって「日本の」とつく語句を考えると「和牛」と言う言葉が出てくるかと思います。
ですから、(①)か(②)には「和牛」を入れると言う事になりますが、どちらか?
(①)に入れると「和牛の(②)よりも」と言う事になり、②の中身が問題になりますが、そもそも「②よりもオーストラリアのアンガス牛」となっているので、 ②とアンガス牛を比べる事になってしまってちょっと不釣り合いな感じがします。
そうなると「和牛」と言う言葉は(①)よりも(②)に入れた方が、「①の和牛よりもオーストラリアのアンガス牛」となってバランスが取れる事になります。
さて?鋭い方は「オーストラリア(国名):アンガス牛(牛の名称)」と来ているのだから、 「日本の○○牛」として○○に何か牛の銘柄を書けば良い筈と思われた方もおられる筈。 (○○の例としては、”松坂牛””大田原牛””伊賀牛”.etc 要は何でも良いです)
なるほど、確かに空欄①と②と後ろのオーストラリアのアンガス牛に絞って考えるならば正解なのですが、
そうしてしまうと、(I)までの部分の文章が意味を持たなくなってきます。
(一応、「文章を読んで」と言う事が前提なので、文章との関連も考えたいところです)
(A)から(I)までで触れられているのは「鰻」の話題ですが、その語「牛」の話になっています。先ほど、何で「鰻」の話題が「牛」に飛ぶんだと言う事がありましたが、 筆者が文章として書いてある以上は(たとえ、その筆者の思考が我々読み手に謎であっても)「鰻」の話が「牛」に関係をしていると考えないといけません。
ですから、空欄①と②もそれだけで決定するのではなく、「鰻」の話に影響を受けていると言う事を考え直す必要が出てきます。
さて、再び(A)から(I)を読み直すならば、どうやら筆者は「鰻が好きで、鰻の脂の味よりも鰻の身の味の方を楽しみたい」と言う趣旨の事を言っています。
特に(I)の部分で「より」と言う表現は無いものの「脂の美味しさも捨てがたいが、身の美味しさをしっかりと味わいたい」と言う表現で「鰻の身の美味しさ」>「鰻の脂の味」と 言う比較を示しているので、この事は大きな手掛かりになる訳です。
そうなると、先ほどの「日本の○○牛」と「オーストラリアのアンガス牛」と言う部分で、
「オーストラリアのアンガス牛」>「日本の○○牛」と言う構造になっている事と繋がってきます
。
「鰻の身の美味しさ」>「鰻の脂の味」
「オーストラリアのアンガス牛」>「日本の○○牛」
と言う構造が見えてきますね?(見える様になりましょう)
「日本の○○牛」=「鰻の脂の味」
(そして、これが、
冒頭の「言いたい事」の形を変えたもの
になるわけです)
もちろん、鰻の脂の味がする「牛」はいないと思いますので(まぁ、「鰻」を餌にした「牛」であれば「鰻の味」にはなるかもしれないですが) 、ここは「脂が強い」「牛」とする事になります。
そして、「脂が強い」「牛」とは、要するに、日本が世界に誇る”霜降り牛”と言う事になります。
(”霜降り和牛”だと「日本」と「和」が被りますが、”霜降り和牛”と通常使っているので、表現としてクドイですがこれを×にするのは難しいでしょう)
(また、ここで使った「霜降り」と言う語句が、
「言いたい事」の形を変えた一つの例
となるわけです)
ですから、一応の解答としては(①)が「日本」、(②)が「霜降り牛」or「霜降り和牛」と言う事になります。
が?オーストラリアの方は「アンガス牛」と固有名詞が使われていて、日本の方は使われていないのはおかしくないですか?と言う疑問が出てくるかと思います。
「おっしゃる通り」。非常に鋭い指摘ですね。
では「固有名詞」要するに「牛の銘柄」をどこに盛るのか?
(①)の「日本」を動かさないとすれば(②)に盛る事になりますから、「○○の様な霜降り牛」などと「~ような」を使って「霜降り牛」を修飾してあげましょう。
「日本」の「松坂牛のような霜降り牛」 (別に「松坂牛」で無くて、何でも可。「島根牛」でも「飛騨牛」でも。但し、「霜降り」で無い牛は止めましょう。つまり奇を衒っていけないと)
他方、(②)の「霜降り和牛」をそのままにするのであれば、①の「日本」を使う事になりますが、(①)と(②)の間には「の」があるので、「~~の」と繋ぐ事になりますが、 「日本~~~」と日本を最初に持ってくるとなかなかシンドイので、 逆に「~~~日本」と日本を修飾するようにして「松坂牛のような日本」と(やはり~~ようなが出てきますが)すると繋がりやすいでしょう
「松坂牛のような日本」の「霜降り牛」
(①)も(②)も変える
両方とも変えるんだと言う事であれば、「日本の霜降り」の「松坂牛」とか、「霜降りの日本」の「松坂牛」とかが巧くはまった感じでしょうか?
こうしてみると、「日本の霜降りの松坂牛」と言う表現は「~~ように」を使わない分、非常にすっきりとした感じになります。
ですので、一番の正解は、この「日本の霜降り」の「松坂牛」と言う事に致しましょう。
と。
以上、非常に長い話になりましたが、
①つ目のポイントとしては、「論理」は文章中ずっと貫かれている。これは途中で話題が変わっても「基本的な部分」は貫かれている。
(この話の例文としては、「鰻」の話が最初から続いていて、最後に「牛」の話であるが、「脂」や「身」と言う事での論理は貫かれている)
②つ目のポイントとしては、解答の部分だけで解答が出るとしても、本文中の「論理」に影響を受ける。
(「オーストラリアのアンガス牛」に対して「日本の松坂牛」とするのは合理的であるが、本文中の「脂」と言う事を反映させないといけない)
と言う事が「論理」を考える上での着目点になります。
「論理」「論理」と言いますが、要するに「話の繋がり」であると言う事を考えて、見て行く(チェックしていく)事で大半の話は決着がつきます。
特に、「良く有る国語アルアル」で、「選択肢の周辺だけを見てました」的な事を答える人が居ますが?
それは、②の様に、その部分だけでは整合性があっても全体で見たら違っていると言う事と同じ訳です。
(冒頭で触れた
「論理」は「積み重ね」と言う部分を思いっきり無視する
事になるわけですからね)
今回、やたら説明が長いですが、それは②の「アンガス牛」「日本の松坂牛」の様に目先だけで解答を出すのであれば、本文自体は何の為にあるんですか?と言う事をしっかりと 考えて欲しいと言う事を力説したい部分だと。
国語の問題は時間との勝負になる事が多いですが、だからこそしっかりと文章を読むと言うトレーニング(問題を解く)を積んでください。
国語は「語彙(vocabulary)」と「丁寧に読む事」、ただただそれだけに突きる単純なものなのですから。