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都立戸山高校 H29年度の過去問から分かる事とその対策


    都立高校の難関校の一つである戸山高校も、難関校に相応しい問題となっているので触れておきたい。
    (設問構成は「漢字」「文章題×3」「記述200文字」のスタイル)

    先ず問1・問2は【漢字の読み書き】。

    特にここの部分の難易度は普通であるので日頃の漢字練習で充分だろう。

    文章題は3つだされており、一問目が「小説系」、二問目が「説明系(論説文)」、三問目が「現古融合(現代文と古文の融合問題)」となっている。

    1番目の文章題は「部活」を巡る先輩・後輩・同学年の女子3人を巡る話で、なかなか硬質な文章。
    これと似たような文体をセンター試験の中に見ることが出来るが、流石に進学校の戸山だけあって、それを意識したというべきだろうか。
    もちろん、センター試験に出題されたものよりは断然に簡単に出来ているのだが、設問や選択肢の作り方が非常にバランス良く出来ていて、都立高校の中でも屈指のレベルを誇る戸山の出題者のレベルの高さを伺う事ができる。
    (徒に難しくすれば良いのではなく、適度な難しさを構築するのが出題者・出題校の腕の見せ所でもある。)

    そういう訳で、特に問1については難解なモノは見当たらないが、解答を選ぶ際に良く選択肢を観て行かないと間違った解答を掴むことになるので、そういう意味で「吟味できる」「注意深く観ていける」という事が失点に繋がる設問であった。



    そして、2番目の文章題。
    これは正面からの「説明文」「論説文」であり、文章に使われている語句や、文章の運び方に悩まれた受験生もあるかもしれない。
    どちらかと言うと、この2番目の文章もセンター試験や早稲田大学などに出てくる「論説文」を意識した様なものであって、やはり大学入試を意識した高校入試と言えるようなものになっている。

    良く国語(現代文)で言われる「文章を【論理的】に読む」ということが正面から求められていて、これが出来ないと選択肢を当てずっぽうで選んでも、しっかりと選ぶ事は難しく、また「200字作文」を書くことも難しくなるだろう。
    「人類学」における2つの局面がある事を通して(文章の前半)一つの論理を出し、その論理に繋げる形で「言語」と「脳」との関係を出してきて、そこにまた「論理」を絡めて、最終的に「人類学」へとまた繋いでいく構成となっている。

    論理」とは何か?

    平たく言えば、「A」という考え方と、「B」という考え方の2つがあり、それによって話が進んで行くというものである。
    下の図で描いた様に、「ヨーロッパからの視点」と「ヨーロッパから見られる側」という組み立て(構造)
    言語と脳における「意識的な働き」と「無意識的な働き」
    などの2つの柱(対立する場合が多い)のそれぞれの説明や根拠が何かと言う事が書かれて、そのどちらが優位か(適切か)ということを決めて行く時の「道筋」であり「やり方」と考えれば良い。

    (要するに、何かしたいという時に、人は色々と理由を付けて説明をするわけだが、その一連の説明と理由づけと考えれば良い。自分が「チョコレートケーキ」を食べたければ、何故、どうしてそれが食べたいかを力説するだろうし、チョコレートケーキの代わりに「おせんべい」をと言われたら、それについての反対(「おせんべい」ではいけない、そして「チョコレート」が良いとの理由)をもするだろう。それがいわゆる【論理】というものに他ならない。)
    また、この【論理】を活かしたものとしての「記述200字」もこの文章の設問として設けられており、「200字」云々の前に、この【論理】に関わる対比構造を押さえないと、内容を外した記述になってしまうことにもなる。

    そういう意味で、この2番目の文章題が戸山高校の合否を左右したと言っても過言ではないのだが、逆に言えば、この程度の問題をこなす生徒を欲しいという学校からのメッセージであるとも言える。

    3番目、最後の文章題は「古文」というよりは上で触れたように「現代文と古文の融合問題」
    都立高校は伝統的にこの手のスタイルが好きなのか、良く出題される形式の問題ではある。
    この問題の利点は、「古文」が分からなくとも「現代文(普通の文章の方)」から推測が可能であるという部分で、古文だけ独立して出されるよりも実は簡単というシロモノでもある。

    (かつての「同志社大学」や「早稲田大学」では「現古融合」「現漢融合」が定番の時代もあった)

    「古文」が入って来る上に、「津田左右吉」などという聞いたことも無い様な人間の名前も出てくるので、それだけで戦意を喪失させるには十分なのだが、よくよく見ればそうは酷い事ではないのに気付くので、逆にここは心折れずにしっかりと臨むべきだろう。
    選択肢的にやや選び辛いものがあるが(問5)、本文での筆者の意図と持ち出した事例とを考えると、「なぜ季節感があるのか」という事についてスッキリと選択肢を選ぶ事が出来るはずである。


都立戸山高校のレベルと対策


    以上から、都立戸山高校の国語の問題は、論理力8.5、知識7.5、そして「200字作文」を含めて解答の処理はある程度の速さが求められることから処理能力9.0程度で、総合で9.1程度の難易度と考えられます。

    特に「都立戸山高校」がと言う訳ではないですが、やはり「進学校」としての位置づけから「大学入試」を意識した問題文や設問となっていることからも、通常の学習に+αをすることが求められます。
    上でも触れたように、「論理的な文章」を読解する上で「語彙」は必要なのと、大学を意識していると言う部分からの「語彙レベル」も高いので、ややハードルは高いものの「大学入試用の現代用語」などで言葉の蓄積と言語感覚を磨いて置くことを勧めたい。

    問題の演習としては、同じく独自校作成問題の「都立西」や「都立青山」などの問題を軸に、「都立日比谷」や「早稲田本庄」などを解くことで、従来の文章とは違う硬質で、言葉運びが難解な文章で慣れて行くことで国語能力を高めて行きたい。

    記述問題」については、記述というだけでの恐怖意識でしかなく、実は筆者の主張を書き抜けば良い(平ったく言えば)ので、文章を理解した上で、重要な対立する考え方を取り上げてまとめられれば点数になるだろう。
    (もちろん、誰かに観てもらった方が良い)