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伊勢物語6段:芥川(あくたがわ)品詞分解


伊勢物語6段:芥川(あくたがわ)現代語訳・品詞分解 <<前半>>

    昔、男がいた。
    容易に手に入りそうも無かった女を、何年もの間求婚しつづけていたが、やっと(その女を)盗みだして、たいそう暗い(夜に)逃げてきた。
    芥川という川(の側)を(その女を)連れて(逃げて)行ったところ、草の上に置いてある露を、
    「あれは何ですか。」と男に聞いた。
    行く先は遠く、夜も更けてしまったので、鬼の住んでいる所とも知らないで、(しかも)雷までもたいそう激しく鳴り、雨もひどく降ってきたので、 荒れて(人気のない)蔵に、女を奥に押し入れて、男は弓とやなぐいを背負って戸口にいた。



    ・昔、男ありけり。→ 「伊勢物語」の冒頭での決まり文句である。

    ・★1→ 「得:ア行下二段動詞・終止形:え え う うる うれ えよ」となるので、ここでは「う」と読む。

    ・女のえ得まじかりけるを→ 「女」「の」「え」「得」「まじかり」「ける」「を」→ 「女:体言」「の:格助詞(同格)」「え:副詞」「「得:ア行下二段・終止形」「まじかり:打消し推量:連用形」「ける:過去の助動詞:連体形」「を:格助詞」→ 「」➡「まじかり」は【陳述の副詞】と呼ばれ「特定の副詞」と「否定形」との組み合わせで、「否定の意味」を強める働きがある。

    ⇒「女の」➡「ける(連体形)」は、「の」が同格の「の」であるために「ける」の下に「体言」を補って訳す(ここでは同格の「の」の前の「女」)➡ そのまま訳すと[女で容易に手に入らなかった(その)女を]となるが、繰り返しになるので、下の部分の「(その)女を」を外して訳した。

    ・経→ 「ハ行下二段動詞・連用形:へ へ ふ ふる ふれ へよ」

    ・よばひわたる→ 「よばひ」+「わたる」の合わさったもの(複合動詞)→ 「よばひ」は「求婚する」という意味で、「わたる」は「~~し続ける」との意味。

    ・かろうじて→ 「からくして(辛くして):副詞」の「ウ音便化」したもの。「ようやく」「やっと」の意味。

    ・暗きに来けり→ 「暗き」「に」「来」「けり」→ 「暗き:形容詞ク活用:連体形」「に:格助詞」「来:カ変動詞・連用形(「き」と読む)」「けり:過去の助動詞:終止形」→ 「暗き」と連体形になっているので「体言(ここでは「夜」)」を補うと訳に幅が出る。

    ・率→ 「ワ行上一段動詞・連用形:ゐ ゐ ゐる ゐる ゐれ ゐよ」

    ・行きければ→ 「行き」「けれ」「ば」→ 「行き:カ行四段動詞・連用形」「けれ:過去の助動詞:已然形」「ば:接続助詞」→ 【已然形+ば】なので「順接」ではあるが「確定条件(~~ので・~~だから)」ではなく、「一般条件~~ところ)」として訳すことに注意

    ・鬼ある所とも知らで→ 「鬼がいる所とはしらないで」と訳す。「で」は接続助詞で「打消し」の意味を持つ。

    ・神さへいといみじう鳴り→ 「神」「さへ」「いと」「いみじう」「鳴り」→ 「神:体言」「さへ:副助詞」「いと:副詞」「いみじう:副詞(ウ音便)」「鳴り:ラ行四段動詞・連用形」→ 「さへ」は「までも」と訳す副助詞で「程度」を表す(他に「だに」「すら」「さへ」も重要)。「いみじう」は「いみじく」がウ音便化したものだが「良い意味(+)」にも「悪い意味(-)」にも使われる。 

    ・雨もいたう降りければ→ 「雨」「も」「いたう」「降り」「けれ」「ば」→ 「雨:体言」「も:係助詞」「いたう:形容詞ク活用:連用形(ウ音便)」「降り:ラ行四段動詞・連用形」「けれ:過去の助動詞:已然形」「ば:接続助詞」→ 【已然形+ば】であるが、上の場合とは違ってこちらは「順接確定条件」として「~~ので」「~~だから」と訳す。

    ・胡簶→ 「やなぐい」と読む。「弓」を入れて置く道具で、担いで使う。(男は、鬼と一戦を交える覚悟で女を蔵に隠し、蔵の前で待ち構えていたと言える。)


伊勢物語6段:芥川(あくたがわ)現代語訳・品詞分解 <<前半>>


    (男が)早く夜も明けてほしいと思いながら立っていた時に、鬼は早くも(その女を)一口で食べてしまった。
    (女は)「ああっ」と言ったけれども、雷の音で、聞く事が出来なかった。
    じょじょに夜が明けてゆき、(蔵の中を)見れば、連れて来た女はいない。
    じだんだを踏んで泣いたけれども、どうしようもない。
    (露を見て)白玉ですか、何ですか、と人(女性)が尋ねたときに、「露です」と答えて、(私は露の様に)消えてしまえば良かったのに。(消えることが出来なかったから、こんなに悲しいのに)



    ・はや→ 副詞。「早く」の意味。

    ・夜も明けなむ→ 「夜」「も」「明け」「なむ」→ 「夜:体言」「も:係助詞」「明け:カ行下二段動詞・未然形」「なむ:終助詞(願望)」→ 【未然形+なむ】の場合には「願望」を表す事になるが、【連用形+なむ】 の場合には「強意(強意の「な」+推量の「む」)」となる。

    ・ゐたりける→ 「ゐ」「たり」「ける」→ 「ゐ:ワ行上一段動詞・連用形」「たり:完了の助動詞:連用形」「ける:過去の助動詞:連体形」→ 「ける」が連体形なので、「体言」補って訳す(この場合は、「~~の時」など)。

    ・言ひけれど→ 「言ひ」「けれ」「ど」→ 「言ひ:ハ行四段動詞・連用形」「けれ:過去の助動詞:已然形」「ど:接続助詞(逆説)」→ 「ど」は「~~だけれども」と訳す。

    ・神鳴る→ 「雷」の事。昔は雷の光とエネルギーを神の地上への表現として考えていた。

    ・え聞かざりけり→ 「え」「聞か」「ざり」「けり」→ 「え:副詞」「聞か:カ行四段動詞・未然形」「ざり:打消しの助動詞:連用形」「けり:過去の助動詞:終止形」→ 「え」➡「ざり」は上で出て来た「」➡「まじかり」と同じ【陳述の副詞】として否定の意味を強める (決して~~ない)。「ざり」は「ず」の活用したもので「ず・ず・ず・ぬ・ね・ざら・ざり・ざる・ざれ」という変化をするので注意。

    ・見れば→ 「見れ」「ば」→「見れ:マ行上一段動詞・已然形」「ば:接続助詞」→ 【已然形+ば】なので、順接の確定条件として「~~ので」「~~だから」と訳す。

    ・★2→ 「率:ワ行上一段・連用形:ゐ ゐ ゐる ゐる ゐれ ゐよ」となる。

    ・来し女→ 「来」「し」「女」→ 「来:カ行変格動詞・連用形」「し:過去の助動詞:連体形」「女:体言」→ 「来」は「き」と読む(「こし」ではない「こ」と読むと未然形となる)。

    ・泣けども→ 「泣け」「ども」→ 「泣け:カ行四段動詞・已然形」「ども:接続助詞(逆説)」→ 「ども」は「ど」と同じように「~~だけれども」と訳す(【已然形+ど・ども】でセットで覚えた方が良い。

    ・かひなし→ 「甲斐無し」と本来は書き、「仕方がない」という意味。

    ・白玉か何ぞ→ 「白玉」「か」「何」「ぞ」→ 「白玉:体言」「か:係助詞(疑問)」「何:体言」「ぞ:係助詞(疑問)」→ 「か」「ぞ」と「疑問」であるので、疑問の形で訳す必要がある。

    ・消えなましものを→ 「消え」「な」「まし」「ものを」→ 「消え:ヤ行下二段動詞・連用形」「な:強意の助動詞:未然形」「まし:反実仮想の助動詞:連体形」「ものを:終助詞」→ 「まし」は「反実仮想」という特殊な助動詞であり、「もし~~であれば~~であったろうに」と訳す。特にここがテストで重要だというわけでは無いが、これが絡むところは十中八九、テストで出題されると思って間違いないので、「反実仮想」という助動詞の名前と「未然形に接続する」という事、そして「和訳」をしっかりと覚えてテストに臨むべきだろう