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お香と匂い



      人の判別を匂いでしました……などと書くと「犬」や動物ではあるまいに……と言う声が聞こえてきそうですが

      電気がなければ、今のように日が暮れて生活をするのに足りる”明るさ”は極端に不足します。
      もちろん、宮中や有力貴族の邸宅では「大殿油(おおとなぶら)」(誰ですか?モンハンとか言っている人は) と言って「油」を燃やした証明器具が夜になると出てきますが(色々な作品(「枕草子」「源氏」「讃岐典司日記」などに出てきますが、「大殿油参り」などと言う表現は、照明器具を運んできたと言う事ですね) 当時とて、「油」は貴重品ですから、そうガンガンと燃やすわけにもいかず、使用は最小限度の場面に抑えられてしまいます。

      ですから、基本的には照明を点けずに、月の薄明りの中で行動をしていた……と言う事に。

      しかも、当時は「おしろい」「おはぐろ」と男も女も決まったメーキャップをしておりますので、そんなものが月明りで判別がつこうはずがない。

      と言う事で発達したのが「お香」

      要するに、今で言うところの香水になるわけですが、それこそ今のエルメスだ、ブルガリだ、と言う感じで「自分らしさ」を追求した「お香」を調合すると。
      そして、この「お香を」焚いて良く服に馴染ませる……と。
      そうすれば、夜暗くて、月の明かりが薄くて、おしろいおはぐろの状態でもお香の匂いで判別ができた……と言う塩梅。

      その結果、古文単語の「匂い」に→①におい ②(匂うような)美しさ と言う意味が付加される事になります(+古文単語としては③色合いも押さえておきましょう)。
      (そして、入試の古文では、「匂い」と言えば、圧倒的に②の美しさの方が正解なのですが、 たまにそれの裏をかいて①のにおいと言う直球で来る事もあるので、そこはしっかりと文脈を把握してください。 ちなみに2009年のセンター本試験では③の意味での匂いではありました。)

      その様な、明るさが乏しかったからこそ、その中で自分をアピールするために発達したのが「匂い」であって、 ヨーロッパの様に衛生面から匂いを隠すために発達した「香水」とは趣を異にするのが古来日本の「匂い」文脈であったのです。
      (余談ついでに、源氏物語の「薫」と言う登場人物がなぜ出てくるのか?と言うのも、当時、如何に「香り」に関心が高かったという事でもありますね)